持続可能な鉱業とは?環境と経済を守るための4つの対策
SDGsとともにサーキュラーエコノミーという言葉が聞かれるようになりました。
サーキュラーエコノミーとは日本語で「循環型経済」と言い「廃棄物を資源と捉えなおして循環させよう」という考え方のことです。
金属はリサイクルに適した素材で、サーキュラーエコノミーの代表格と言えるでしょう。
しかし金属を製造するために必要な採掘活動は、汚染物質の排出や多くのエネルギーを消費するといった問題を抱えています。
こちらの記事では、鉱業が環境に与える問題と対策方法について解説します。
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目次
鉱業が環境に与える3つの問題
ナイフやハンマーといった道具からスマホやテレビなどの電化製品まで、あらゆるモノに金属が利用されています。
私たちの暮らしに金属は欠かせない存在です。一方で、金属の原料である鉱石の採掘によって、失われている命があります。
こちらでは鉱業が環境に与える問題点について解説します。
住む場所を失う人・生き物がいる
鉱石の採掘活動によって森林破壊が起こり、住処を失う生き物がいます。
コンゴ民主共和国では、レアメタル「タンタル」の採掘が原因で、絶滅危惧種のゴリラが数を減らしています。鉱山で働く鉱夫が、食肉を目的としてゴリラを狩猟しているためです。鉱石を掘り出すために森林伐採も行われているため、コンゴ民主共和国では環境破壊が進んでいる状況があります。
「天国に一番近い島」と人気の観光地、ニューカレドニアでは、ニッケル採掘のために自然破壊が進み、固有種の動植物が数を減らしています。また採掘活動の影響は植物や動物のみに収まらず、先住民の生活にも多大な影響を与えています。
デジタル技術の進歩に伴って、レアメタルをはじめとした金属の需要は今後も増加するでしょう。
しかし鉱山の開発は自然に大きな負荷がかかるため、環境への影響が少ない採掘活動や、使用済み製品の積極的なリサイクルなどの対策が求められているのです。
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鉱山廃棄物が環境汚染につながる
鉱石から金属を製錬した際に残る「鉱さい(スラグ )」は、環境に悪影響を与えます。
鉱さいは通常、「鉱さいダム」という施設で処理されています。
しかし洪水やダムの老朽化による損傷などを原因に決壊が起こると、有害物質を含んだ泥や水が流れ出し、周辺環境を汚染してしまいます。
2015年にブラジルのマリアナ市で起きた鉱さいダムの決壊事故では、川や海に汚泥水が混ざり、水が茶色くなる現象が起きました。事故から1~2年後に行われた調査では、周辺住民の血液にニッケルや亜鉛が異常な量で検出されました。調査の対象となった市民は、埋めたてを行った汚泥の上で生活をしていたため、人体に有害な重金属であるニッケルや亜鉛を吸い込んだものと考えられています。
このように、鉱山廃棄物は適切に管理・処理しなければ、重大な環境汚染を引き起こしてしまうのです。
多くのエネルギーや水を消費する
採掘した鉱石から金属を取り出すには、多くの水やエネルギーを使用します。 鉱石を選別する「選鉱」には、比重選鉱や浮遊選鉱がありますが、そのプロセスにはいずれも水が使われています。また鉄を1トン製造するためには、冷却や洗浄に110トンもの水が必要で、鉄を溶かすための炉では1日あたり一般家庭の100年分の電力を消費するものもあるのです。
鉱業にとって水や電気は必要不可欠なものですが、使用量を減らす仕組み作りが求められています。
持続可能な鉱山開発を行うための4つの対策
鉱業が抱える3つの問題点について解説しました。
では環境破壊を防ぎ、鉱業を持続可能な産業にするには、どのような対策が必要でしょうか。
以下では持続可能な鉱山開発について、4つの対策方法を解説します。
資源をムダなく利用する
まず大切なのは、採掘した鉱石をムダなく利用することです。
「金山」や「銀山」という言葉があるため、1カ所の鉱山から採れる金属は1種類の金属だけ、というイメージがあるかもしれません。しかしひとつの鉱石には、複数の金属が含まれています。
それぞれの金属には最適な抽出方法があるため、適切な製錬方法を用いることや、より多くの金属が抽出できる方法を開発することが必要です。
掘り出した鉱石を余すことなく使い、資源をムダにせず使い切ることが環境保護に繋がります。
鉱さいをリサイクルする
鉱石から金属を抽出した後に残る「鉱さい」をリサイクルすることも重要です。
鉱さいは産業廃棄物であるため、法律によって処理方法が定められていますが、リサイクルも進められています。
道路をアスファルトやコンクリートで舗装する際、下地に使われる砂利と鉱さいを混ぜたり、鉱さいから作られた「鉱さいけい酸質肥料」は土の状態を改善する肥料として、農業で使用されたりしています。また海中の鉄分不足への対策として、鉱さいを撒くこともあります。鉄分が不足すると磯焼けが起こり、海藻が育たなくなってしまいますが、廃棄物である鉱さいは海の環境を守る栄養として役立っているのです。
令和3年度の環境省の調査によれば、鉱さいの再生利用率は93.8%と高い数値になっており、リサイクルが進んでいることがわかります。
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鉱山開発を省エネ化する
鉱山の開発を省エネ化する努力も、持続可能な鉱業のために欠かせません。
SDGsとともに、ゼロエミッションやカーボンニュートラルという言葉が使われるようになり世界的にゼロエミッションへの取り組みが進められています。
鉱業は、森林伐採や大量の水・電気の使用など、環境への負荷が非常に高い産業です。
継続的な社会の発展や環境保護のために、水を循環させ再利用する、使用する電力量を減らす工夫が必要となっています。
また採掘が終わり閉山した場所には、植林を行い再び緑化させることも必要です。
使用後の金属のリサイクルを推進する
限られた資源を有効に使うためには、リサイクルの推進も必要不可欠です。
「都市鉱山」という言葉があります。都市に鉱脈がある、ということではなく、都市部には不要となった家電製品が集まっており、それらの中に存在している金属のことを指す言葉です。
テレビ、スマホ、冷蔵庫など、家電にはさまざまな金属が使われています。不要となった家電は、製品によってリサイクルできるものとできないものがあります。
スマホの電子基板には金が使用されていますが、量が少なく取り出すことが難しいため、廃棄されてしまうことが多くありました。
最近では技術開発が進み、これまで難しいとされていた電子基板から金を回収する技術が確立されました。
デジタル化が進む社会では、今後も金属の需要増加が見込まれます。都市鉱山から金やレアメタルを回収する技術は、持続可能な経済成長を支える大切な要素です。
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鉱業が抱える問題と、持続可能な鉱山開発に必要な対策について解説しました。
鉱業の問題点と対策まとめ
- ●鉱石の採掘作業は環境破壊を進め、動植物の暮らしに悪影響を与えている
- ●鉱業では多くの水とエネルギーを使用するため、省エネ技術の開発が期待される
- ●持続可能な鉱業を実現するには資源をムダなく利用し、リサイクルも積極的に行う必要がある
地球上にはまだ採掘されていない鉱脈が存在しており、今後も鉱山の開発が進められるでしょう。
鉱石の採掘活動は経済成長に大きな役割を果たす一方で、環境破壊という重大な問題を抱えています。
持続可能な鉱業の実現には、効率的に金属を抽出する技術の開発や都市鉱山の活用が欠かせません。
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